専門医療センター
■センター紹介
お子さんの成長に寄り添い、専門性の高い
「トータル・アレルギーケア」を提供します。
近年増加傾向にある子どものアレルギー疾患に対応するために、2018年4月当院に「小児アレルギーセンター」が誕生しました。当センターで行う治療や取り組みについてご紹介します。

地域のアレルギー診療の中核を担う専門医療センター
アレルギー疾患は急激な症状の悪化やQOL(生活の質)が著しく損なわれることにより、日常生活に大きな影響を及ぼします。また現代は巷に情報が溢れているため、自己判断からエビデンス(医学的根拠)に乏しいケアを行い、症状を悪化させてしまうケースがしばしばあり、社会的な問題ともなっています。 当院小児科では、早くからアレルギー疾患の診療に力を入れてきましたが、増加する患者さんと多様なニーズに対応するため専門医を増員し、小児アレルギーエデュケーターらスペシャリストを集結させて、新たに「小児アレルギーセンター」を開設。一層充実した診療に取り組んでいます。
成長とともに変化する子どものアレルギーを総合的に診断
子どもの主なアレルギー疾患には、アトピー性皮膚炎や気管支ぜん息、食物アレルギーがあります。このうち乳幼児期にはアトピー性皮膚炎や食物アレルギーが多くみられ、1歳を過ぎるとぜん息症状がみられるようになります。このように複数のアレルギーが連鎖して現れてくることを「アレルギーマーチ」といいます。 アレルギー体質をもつお子さんがアレルギーを発症すると、アレルギーマーチを引き起こすことが多いため、個々のアレルギー症状だけでなく、一連の流れの中で総合的に診断・治療を行う必要があります。

■小児アレルギーセンターで治療を行う主な疾患
子どものアレルギー疾患に精通したアレルギー専門医が、アレルギーマーチの発生リスクや重症化予防を視野に入れ、先を見すえた総合的なアレルギー診療を提供します。
食物アレルギー
特定の食品を飲食することで体内の免疫が過剰に反応し、アレルギー症状が現れる病気です。原因食物や症状はさまざまですが、主な症状としてはじんましんやかゆみ、鼻水、咳、腹痛、嘔吐、下痢などが挙げられます。全身に複数の症状が現れるアナフィラキシーや、血圧低下や意識障害を伴うアナフィラキシーショックなど命に関わる状態に至ることもあり、注意が必要です。

● 専門医のポイント解説 ●
問診と各種検査により総合的に診断します。検査では血液検査や皮膚テストのほか必要に応じて食物経口負荷試験を実施し、過剰な食物除去につながることのないよう治療計画を立てます。アナフィラキシーのリスクが高いお子さんにはエピペンの処方もしています。
食物経口負荷試験とは?
食物経口負荷試験は原因食物を正確に診断し、安全に摂取できる種類・量を決定するために必要な検査です。当院では専門医の管理のもと、アレルギー症状出現時の対応に万全を期して負荷試験を行っています。
アトピー性皮膚炎
強いかゆみと湿疹を主な症状とする皮膚の病気です。湿疹は顔や首、肘、膝などに現れやすく、ひどくなると全身に広がります。もともとアレルギーを起こしやすい体質の子どもや皮膚のバリア機能が低下した子どもに多くみられ、慢性的な経過をたどるのが特徴です。

● 専門医のポイント解説 ●
治療の柱は薬物療法・スキンケア・環境への対策で、適切な治療とケアにより大半のお子さんは日常生活に支障がないレベルに症状を抑えることができます。なお近年の研究から、離乳食前に湿疹があると食物アレルギーを発症しやすいことが解ってきました。当院では産科と連携して妊産婦さんに情報を提供するとともに、
発症リスクの高い新生児をもつ親御さんにスキンケア指導を行い、アレルギーの進展予防にも力を入れています。
気管支ぜん息
気道が慢性的に炎症を起こすことでさまざまな刺激に過敏に反応し、気道が狭まり息苦しくなる病気です。ゼーゼー、ヒューヒューという音を伴う呼吸や咳が特徴です。子どもの3~9%と発症頻度が高く、約80%が3歳までに発症します。

● 専門医のポイント解説 ●
薬の進歩により、ぜん息は以前に比べ格段にコントロールしやすくなっています。ぜん息の薬には発作時に吸入する薬と、気道の炎症を鎮めるための長期管理薬があります。当センターには小児アレルギーエデュケーターの資格をもつ薬剤師がおり、お子さんの年齢や症状に合わせて薬や吸入器、補助具などのデバイスを検討し、正しい使用法を丁寧に指導します。
アレルギー性鼻炎
スギ花粉が原因となっておこるスギ花粉症とダニ、真菌(カビ)、ペットの毛などが原因となり季節に関係なく症状があらわれる通年性アレルギー性鼻炎があります。どちらも主にくしゃみ、鼻づまり、鼻水、目のかゆみ等のアレルギー症状を伴い、そのつらい症状は、日常生活のさまざまな場面で悪影響を及ぼします。

● 専門医のポイント解説 ●
症状を引き起こす物質(ヒスタミンなど)の働きや鼻の炎症などを抑えて症状を和らげる一般的な薬物療法のほか、原則5歳以上のスギかダニによるアレルギー性鼻炎に対して、舌下免疫療法(舌の下にすぐに溶ける錠剤を置く治療)を行っています。
従来の薬物療法では十分な効果が得られずお悩みの方は、治療をご相談ください。
舌下免疫療法とは?
舌下免疫療法は、スギ花粉やダニ抗原を原料とした治療薬を少量から服用することにより、体を慣らしてスギ花粉やダニによるアレルギー症状を和らげる治療法です。
成人の舌下免疫療法も小児科で診療を行っていますので、ご相談ください。
■センター特色
院内外の連携で、お子さんの安全と安心をサポート
八千代病院小児アレルギーセンターは、地域のアレルギー診療の中核を担う専門医療センターとして、以下の3つを活動の基本方針に掲げ、アレルギーを抱えるお子さんが安心して生活できるよう支援します。
エビデンスに基づく質の高いアレルギーケア
近年、アレルギー研究の進歩はめざましく、新たな知見や治療法の有効性が示され、アレルギー疾患へのアプローチは大きく変化してきています。例えば食物アレルギーに関しては、これまで「完全除去」が基本でしたが、近年は検査により安全に食べられる量を見極め、摂取できる量を食べたほうがアレルギーの重症化を防ぐとして推奨されるようになりました。
当センターでは、アレルギーの広範な知識を学び、豊富な臨床経験をもつスタッフが、最新のエビデンスに基づく質の高いアレルギーケアを提供します。
多職種連携によるチーム医療
アレルギー疾患の多くは長期的な治療とセルフケアが必要となります。そこで専門医と連携して小児アレルギーエデュケーターや栄養士らが治療に携わり、ぜん息治療で使用する吸入器の使い方、アトピー性皮膚炎のスキンケア方法、食物アレルギーの治療食の作り方などを具体的に指導します。
お子さんとご家族の疑問にしっかりと耳を傾け、治療に前向きに取り組んでいただけるよう丁寧な説明を心がけています。
地域のアレルギー対応力向上
成長期のお子さんとご家族の不安や負担をできるだけ軽減し、病気を抱えながらも地域で安心して暮らせるよう環境を整えていくことも、私たちの使命の一つだと考えています。
そのためセンターでは、市民講座などを通じてアレルギーに関する情報を積極的に発信しています。また食物アレルギーのお子さんが通う学校を訪問し、情報を共有したり、アナフィラキシー発症時の対応について教職員への研修も行っています。
■小児アレルギーセンターの受診方法
受診を希望される方は、かかりつけ医にご相談のうえ紹介状をご持参ください。かかりつけ医のない方は、小児アレルギーセンター受付(小児科に併設)に直接お問い合わせください。
- 紹介状を持たずに来院される初診の方は初診時選定療養費として3,300円(税込)を別途徴収させていただきます。
●お問い合わせ時間
月〜金曜日 14:00〜16:00/
第2・4・5土曜日 9:00〜12:00
☎0566-97-8111(代表)
■診療日
小児アレルギーセンターの診察は、「小児科外来」で行います。
●診療受付時間/
8:15〜11:30 (休診日を除く)
■医師のご紹介
氏名 | 所属学会 |
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小児アレルギーセンター長 川口 博史 [かわぐち ひろし] |
日本小児科学会(専門医) 日本アレルギー学会 日本小児アレルギー学会 日本小児救急医学会 日本医師会(臨床研修指導医) 医学博士 |
小児科医長 山脇 一夫 [やまわき かずお] |
日本小児科学会(専門医) 日本小児科学会(指導医) 日本アレルギー学会(専門医) 日本小児アレルギー学会 |
近藤 康人 [こんどう やすと] |
日本小児科学会(専門医) 日本小児科学会(指導医) 外来小児科学会 日本小児耳鼻咽喉科学会(評議員) 日本アレルギー学会(専門医) 日本アレルギー学会(指導医) 日本アレルギー学会(理事) 日本小児アレルギー学会(理事) ラテックスアレルギー研究会(理事) 日本小児臨床アレルギー学会(理事) 日本喘息学会(専門医) American Academy of Allergy Asthma & Immunology Member |
齋藤 彩子 [さいとう あやこ] |
日本小児科学会 日本アレルギー学会 日本小児アレルギー学会 日本小児皮膚科学会 |
当院は日本アレルギー学会専門医教育研修施設であり、アレルギー専門医による専門医療を提供しています。