診療情報
より正確な前立腺がんの診断に
MRI-超音波画像融合標的生検システム「トリニティ」を導入
日本人男性のがんで最も罹患率の高い前立腺がん。近年、医療機器の進歩と検査技術の高度化によって、より正確な診断が可能になってきました。当院泌尿器科では、2023年6月より地域に先駆け、MRI-超音波画像融合標的生検システム「トリニティ」を用いた前立腺の標的生検を開始。診断精度の向上に努めています。
■MRI-超音波画像融合標的生検システム
トリニティ(仏 コエリス社製)
今回導入した生検システム「トリニティ」では、高解像度のMRI画像と超音波画像を融合させ、前立腺を3D画像として描出することができます。そのため、がんが疑われる部位から正確に組織を採取することが可能になり、検出率の向上および、より的確なリスク判断に寄与します。

MRI-超音波画像融合標的生検

●がんが疑われる部位(標的部位)を可視化し、組織を採取する操作をナビゲーションすることで、標的部位を狙い撃ちします。
●前立腺の動きや変形に対応し、標的部位を追尾する機能をもつため、超音波画像のみの生検よりも正確な採取がしやすくなります。
●生検した部位の記録を3D画像で残すことができ、治療に活用できます。
新しい生検システムは、これまでと何が違う?
PSA検査で値が高く、MRI検査、超音波検査などの二次検査で前立腺がんが疑われる場合、確定診断のために生体検査(生検)が必要です。生検では、直腸の壁を通して前立腺に針を刺して組織を採取し、がんの有無や悪性度を調べます。
PSA検査とは?
PSAは「前立腺特異抗原:prostate-specific antigen」の略語で、前立腺から分泌されるタンパクです。前立腺にがんや炎症があるとPSAが血液中に漏れ出し、増加します。血液検査でPSA値を調べることによって前立腺がんの可能性を調べます。
この前立腺生検には大きく2つの方法があります。
1.系統的生検(一般的な生検)
直腸に超音波器具(プローブ)を挿入し、超音波画像を観察しながら前立腺の10〜12か所の決まった部位に針を刺して組織を採取します。
超音波画像のみをたよりに生検を行うため、事前に撮影したMRIで指摘された異常部位が超音波でも描出できる場合は問題ないのですが、病変の部位や大きさによっては描出が困難な場合があり、組織をうまく採取できず、2回目、3回目の生検が必要になることがあります。
2.標的生検(MRI-超音波画像融合標的生検)
事前に撮影されたMRI画像と、生検時に取得する超音波画像をシステム上でリアルタイムに融合し、がんが疑われる部位を明確に可視化した状態で組織を採取します。
系統的生検よりも、がん検出の精度が高く、位置や大きさ、悪性度を正確に把握できるのが特長です。
当院では、標的生検を1泊2日の入院で実施しており、検査所要時間は30分程度です。
より正確な診断で、患者さんにやさしく、最適な治療を提案

前立腺がんは死に直結する“悪いがん”から、放っておいても進行しない“おとなしいがん”までさまざまあり、生検は治療方法を選択する上で重要な手がかりとなるものです。
当院では、「トリニティ」を使用した標的生検に系統的生検を組み合わせて実施することで、診断の精度を高め、患者さんにとって不必要な再生検や、過剰な治療を回避するよう努めています。
近年は、前立腺がんの腫瘍マーカー「PSA」による前立腺がん検診が自治体などで広く実施されるようになりました。当院には泌尿器科専門医が在籍しており、近隣の検診機関やクリニックと連携し、前立腺がんの診断に積極的に取り組んでいます。
検診で再検査・精密検査の必要があると指摘された方、また気になる症状(血尿、尿が出にくい、痛みがある、頻尿など)がある方は放置せず、早めに受診されるようお勧めします。